緩和ケアとは、がんやその他の特定の疾病、それに伴う痛みなどの身体症状の緩和や精神心理的な問題への援助などのことを指します。
患者やその家族が質の高い療養生活が送れるよう、終末期に限らず、治療の初期段階からあらゆる場面において、切れ目なく適切に医療を提供できるようにがん等の診療に携わる全ての医師等が緩和ケアの重要性を認識し、その知識や技術を習得することが必要とされています。
平成28年にがん対策基本法が改正されたことを機に、緩和ケア研修が行われました。最初は医師だけでしたが、今はチーム医療に携わる総ての医療従事者が受講するよう勧められています。
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私の研修先である広島大学病院の漢方診療センターでは、接触鍼を用いた緩和ケアをおこなっています。
他科からのコンサルにより患者様のベストサポートケアのひとつの手段として鍼灸が取り入れられているのです。
そのため当センターの鍼灸師は緩和ケアの研修が必須となっています。今日はその緩和ケアの感想を、チーム医療や医療連携に興味のある鍼灸師さんや鍼灸学生さんに読んで欲しくて投稿しました。
質問や気になるところ(感想も是非!)DMやコメントでお気軽にお尋ね下さい。
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【鍼灸師の出番無し??】
緩和ケア学習は各自e-Learningの受講を経たのち、グループワークで7時間の研修を受ける流れとなっています。
グループワークではまず3人で患者、医療従事者、見学者の
役をそれぞれ交代で行います。医療従事者は普段の職種のシナリオが渡されるのですが鍼灸師のシナリオがないため理学療法士のシナリオで演じることになります。
ロールプレイングの際は患者の立場になって物事を考えるあまり、自身のがんで亡くされたお母様の思い出が蘇り、涙してしまう方もいらっしゃいました。
実際に理学療法士の方ががリハビリをされるときもこのようなシーンになることも少なくないのだろうなと非常に勉強になるロールプレイでした。
その後メンバーを入れ替えてのグループワークでは一つの症例に対して患者さんの痛みの原因や状態にどのような処方や薬物療法以外の治療をするかを発表しました。
薬の知識も深くなく、実際の臨床経験が無いわたしは書記係に徹するも、医療従事者間では当たり前であろう略語や専門用語が分からず、何度も聞き直しながらホワイトボードにまとめました。
この時感じたのは
「鍼灸師として何もできない」
という情けなさでした。
依頼があって緩和ケアに入る当センターではこちらから鍼灸の提案をするというシーンは少ないです。
限られた時間で分かりやすく、機序を明確に、鍼灸でのアプローチを説明する練習が必要だと感じました。
次のグループワークでは先程の症例の患者さんが在宅医療を望んだ場合どう対処するか?
という課題でした。
現時点でのADLを確認したり、社会的背景を確認したりと悩ましい状況になりそうだったので、
「まずソーシャールワーカーさんに相談するのはいかがですか?」
と提案したところ、「あぁそうだね!」と話の方向が定まったのを感じました。
介護保険の申請や住環境の整頓、キーパーソンの方の負担の軽減などなど…
続々とアイデアが出ました。
医師や看護師、薬剤師がメンバーの中おそれずに発言できたのは、広大で参加させて頂いている緩和ケアのカンファレンスのおかげでした。
漢方診療センターでは緩和ケアとリハビリ科のカンファレンスに参加することで、様々な症例とそれに対する最適な医療を考える経験をさせて頂いています。
前半ではぐうの音も出ない私でしたが、後半では発表者をさせて頂きました。
フィードバックタイムでは
「患者の全人的苦痛をきちんと問診できるか」
「患者やその家族にとって良いケアマネを繋げれるか」
が大切であると在宅医の方が仰っていました。
私が医師や薬剤師、看護師等々その他の医療従事者の知識量を今から身につけることは正直現実的ではありません。
しかし
「患者さんへの丁寧な問診」と「信頼できるケアマネさん探し」
は鍼灸師でも充分できるのではないでしょうか?
グループワーク後にはファシリテーターをして下さった理学療法士の方から「鍼灸ではどんな治療をされるんですか?」と興味津々に尋ねられました。
興味はあるけど尋ねる機会が無いだけの場合もあります。鍼灸師がチーム医療に組み込める方法は以外と身近にあるものだと思える一日でした。
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緩和ケア学習ではお互いを〇〇先生ではなく〇〇さんと呼ぶ、名札に職種を書かない。等のチームとして平等に意見を述べる工夫がされていました。
またロールプレイ中に涙してしまった方へも精神科医の方がすぐに駆けつけ対応していました。
本当の医療連携ってなんだろうか?
と概念から考えさせられましたが、皆さんはどう思いましたか?